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日外会誌. 90(2): 222-227, 1989


原著

胃癌組織内 NCC-ST-439の検討
―病理組織学的所見,術後生存率および核 DNA 量分布パターンとの対比を中心にー

金沢大学 医学部第2外科

鎌田 徹 , 米村 豊 , 杉山 和夫 , 山口 明夫 , 三輪 晃一 , 宮崎 逸夫

(1987年6月3日受付)

I.内容要旨
胃癌の悪性度をより正確に知るために胃癌244例について胃癌組織内NCC-ST-439抗原の有無と病理組織学的所見,術後生存率ならびに核DNA量分布パターンとの関連性について検討した.NCC-ST-439の染色にはperoxidase antiperoxidase method(PAP法)を用いた.核DNA量は,細胞を単離後,落射型蛍光測光装置にて測定し,high ploidy cellの割合に応じて,I型(low ploidy type),II型(intermediate type),III型(high ploidy type)の3型に分類した.胃癌組織内NCC-ST-439陽性率は244例中81例33.2%であった.陽性率は深達度ではss以上,組織型では分化型が有意に高率であり,脈管侵襲陽性,肝再発,リンパ節再発例においてもNCC-ST-439陽性率が有意に高率であった.NCC-ST-439陽性例の5年生存率は42.1%で,陰性例の64.5%に比較して有意に低率であった.これをstage別にみるとstage I,IIで陽性例の予後が有意に不良であった.次に核DNA量分布パターンとNCC-ST-439陽性率との関係をみると,NCC-ST-439陽性率はI型26.5%,II型36.6%,III型54.5%とhigh ploidyになるにつれ高率となり,NCC-ST-439陽性かつIII型では5年生存率18.2%でNCC-ST-439陰性かつI,II型の65.3%に比較して有意に低率であった.これは核DNA量単独あるいはNCC-ST-439単独で評価するよりも予後を反映していた.また早期胃癌について検討すると,NCC-ST-439陽性胃癌では脈管侵襲陽性率が高く,5年生存率は66.6%で,陰性例の95.3%に比較し有意に低率であった.以上より,胃癌組織内NCC-ST-439は胃癌の予後判定因子の1つと考えられ,とりわけ他の癌関連抗原で認められなかった早期胃癌の予後と相関したことより,早期胃癌の悪性度の指標として重要であると思われた.

キーワード
胃癌組織内 NCC-ST-439, 早期胃癌, 核 DNA 量分布パターン


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