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日外会誌. 90(2): 168-180, 1989


原著

核 DNA 量 ploidy pattern ならびに Bromodeoxyuridine モノクローナル抗体による肝細胞癌の悪性度に関する研究

大阪市立大学 医学部第1外科学教室(指導:梅山 馨教授)

蔡 栄若

(1988年1月22日受付)

I.内容要旨
Diethylnitrosoamine誘発肝細胞癌ならびにヒト肝細胞癌について,核DNA量ploidy patternを病理学的並びに免疫組織学的成績との関聯で検討し,以下の成績をえた.
1.肝細胞癌ラット113匹中74匹65.5%に単発あるいは多発性に肝細胞癌が発生した.組織学的にはヒト肝細胞癌と類似した組織像がえられ,門脈枝内への浸潤は74匹中31匹41.9%に,肺転移は74匹中25匹33.8%に認められた.
2.肝細胞癌の核DNA量ploidy patternは2cと4c,3cと6c,4cと8cにそれぞれpeakをもつ3型に分けられ,I型は6匹,II型は15匹, III型は19匹にみられた.ploidy patternが1型からIII型となるに伴って脈管浸潤の発現が多くなり,組織学的にもEdmondson(Ed)I型よりEd III型が多くなる傾向を示し,labeling index(LI)やmitotic index(MI)も高値を示した.
3.ploidy patternがI型からIII型になるに伴って6c以上のpolyploid cellの出現頻度が高くなり,このpolyploid cellの出現率はEd I型よりEd III型になるにつれて高くなる傾向を示した.
4.ヒト肝細胞癌21例の核DNA量ploidy patternはラット肝細胞癌と同様にI,II,III型に分けられ,I型は6例,II型は7例, III型は8例にみられた.
5.ヒト肝細胞癌の核DNA量ploidy patternがI型からIII型になるに従って,Edmondson分類のEd I型からEd III型が多くなる傾向を示し,細胞分裂数も増加し,被膜浸潤の陽性頻度も高くなる傾向を示した.
6.6c以上のpolyploid cellの出現頻度はploidy patternがI型よりIII型になるに伴って有意に増加し,またEd I型からEd III型になるに従って高率にみられた.
以上の成績から,肝細胞癌核DNA量ヒストグラムによるploidy patternならびにBromodeoxyuridineによるLIの測定は,肝細胞癌の生物学的悪性度の判定にある程度意義あるものと考えられた.

キーワード
肝細胞癌, 核 DNA 量 ploidy pattern, 抗 BrdU モノクローナル抗体, labeling index, mitotic index

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