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日外会誌. 90(1): 22-33, 1989


原著

食道癌患者における Natural killer (NK) 活性低下の要因と対策

大分医科大学 第1外科(指導:小林迪夫教授)

膳所 憲二 , 斉藤 貴生 , 小林 迪夫

(1988年2月22日受付)

I.内容要旨
食道癌患者57例を対象にNK活性を測定し,その低下の要因,治療による影響およびNK活性低下に対する対策について検討した.NK活性の測定は,患者末梢血単核球をeffector細胞とし,標的細胞にはK562を使用し, microplateによる51Cr-release法にて行った.
食道癌患者の入院時のNK活性は,正常者に比し有意に低下しており,胃癌,大腸癌患者に比べても若干低かった.Leu-7陽性細胞比は,逆に食道癌患者で胃癌,大腸癌患者に比し有意に高かった.そこで,NK活性の低下の要因を性別,年齢,栄養,担癌との関連で検討した.栄養との関連でみると,血清アルブミン,クレアチニン・身長比などはNK活性と有意の正の相関を,三頭筋皮下脂肪は正の相関傾向を示した.癌の進行度との関連では,NK活性は癌の長径と有意の負の相関を示し, stage別にみても非切除進行例群およびstage III~IV群のNK活性は, stage 0~II群に比し有意に低かった.また,癌の悪性度に関与する臨床病理学的諸因子との関連でも,静脈侵襲陽性群のNK活性が,陰性群に比し有意に低かった.なお,NK活性と性別,年齢との間に一定の傾向はみられなかった.治療侵襲のNK活性への影響をみると,術前放射線治療(放治)は, NK活性を有意に低下させ,手術はNK活性の低下をさらに助長させた.術後のNK活性の回復には約4週間を要した.
術前放治回避例および2期分割第1次手術(切除のみ)施行例では,それぞれ術前放治例および1期的切除再建例に比し術後のNK活性の回復が早い傾向がみられた.また,免疫賦活剤OK-432の術前投与例では,非投与例に比し放治および手術によるNK活性の低下が軽度でその回復も良好であった.すなわち,術前放治の回避,2期分割手術の選択,術前OK-432の投与はNK活性低下に対して有用である可能性が示唆された.

キーワード
食道癌, NK 活性, 低栄養, 担癌, OK-432


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