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日外会誌. 89(10): 1726-1729, 1988


症例報告

皮膚癌にて失つた死体腎移植18年生着症例

千葉大学 医学部第2外科

有田 誠司 , 浅野 武秀 , 榎本 和夫 , 永田 松夫 , 後藤 剛貞 , 落合 武徳 , 磯野 可一

(昭和62年10月14日受付)

I.内容要旨
死体腎移植後18年にわたり,移植腎機能良好にて社会復帰を果していた症例を今回皮膚癌にて失つたので,若干の考察を加え報告した.
症例は39歳男性で,慢性腎炎を経て腎不全となり来院.26回の血液透析後,昭和43年6月,脳挫傷にて死亡した30歳男性をドナーとして死体腎移植術を受けた.術後早期に粟粒結核に罹患するも軽快し,以後腎機能良好にて仕事に従事していた.免疫抑制剤も極く少量に維持されていた.昭和61年3月,57歳時に左前額部に皮膚有棘細胞癌が出現し,同切除したが,耳下腺,肺,体幹部皮膚等に,転移巣現れ,同年10月脳梗塞合併して死亡した.移植腎機能は死亡する直前まで極めて良好であり,また本症例は,死体腎症例では本邦最長生着症例であつた.
移植後悪性腫瘍に関する我々の検索では,移植後患者はNK活性の低下等により,immunologicalsurveillanceが減弱化していると思われたが,悪性腫瘍の年次発生率は,男0.78%,女0.45%と従来言われているほど高率ではなかつた.更に広汎な調査が必要と思われる.

キーワード
死体腎移植, 長期生着例, 悪性腫瘍


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