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日外会誌. 89(10): 1594-1602, 1988


原著

ln vitro 制癌剤感受性試験における薬剤接触濃度の設定に関する研究―5-fluorouracilを中心に―

慶応義塾大学 医学部外科学教室 (指導:阿部令彦教授)

磯部 陽

(昭和62年11月10日受付)

I.内容要旨
in vitro制癌剤感受性試験を癌化学療法へ応用するための基礎的検討として,担癌ヌードマウスを用いて5-fluorouracil(5-FU)のin vitroおよびin vivo治療実験をおこない,in vitroにおける最適薬剤接触濃度を理論的に設定することを試みた.
In vitro感受性試験では,ヌードマウス可移植性ヒト癌8株を用いて5-FU 2週間持続接触法によるclonogenic assayをおこなつた.5-FU投与後のマウス血中および培地中の濃度変化をbioassayにより測定し,腫瘍組織が接触する薬剤濃度と相関する薬物動態学的パラメーターとして血中および培地中の濃度曲線下面積(AUC)を求めた.
5-FUに対してin vivoで感受性の異なる結腸癌Co-4,胃癌H-111,乳癌MX-1の3株において,in vitroin vivoともに5-FUのAUCと抗腫瘍効果(T/C値)は良好に相関した.この3株について,それぞれin vitroin vivoにおけるAUC-T/C相関から得られた2つの回帰式よりT/C値を共通項として,in vitroin vivoで同等の抗腫瘍効果が得られるときの両者のAUC間の関係式を導いた.これらの関係式よりin vivoにおける5-FUの最大耐量(50mg/kg 3回投与)のT/C値を定量的に予測するために必要なin vitroでの薬剤接触濃度は3~7μg/mlと算出された.全8株についてこれらの濃度を用いてin vivoにおける5-FUの抗腫瘍効果を予測したところ,H-111より得られた3μg/mlの濃度を用いたときの予測率が87.5%と最も良好であつた.
本法を応用することにより,持続接触法を用いたin vitro制癌剤感受性試験の精度が向上する可能性が示唆された.

キーワード
制癌剤感受性試験, clonogenic assay, 5-fluorouracil, 薬物動態, 薬剤接触濃度


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