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日外会誌. 89(7): 1022-1027, 1988


原著

数量化による直腸癌の血行性転移と局所再発の予知の可能性

秋田大学 医学部第1外科

小棚木 均 , 永沢 治 , 丹羽 誠 , 高橋 政弘 , 成沢 富雄 , 小山 研二

(昭和62年7月27日受付)

I.内容要旨
直腸癌術後の血行性転移と局所再発を数量化により予測することを目的とした.
直腸癌術後104例を対象とし,血行性転移32例と局所再発13例の臨床病理学的特長を,血行性転移をみない65例あるいは局所再発をみない60例と比較して求めた.つぎに,特長的として得られた臨床病理学的因子が血行性転移あるいは局所再発に及ぼす重みを,数量化II類による多変量解析から検討した.そして,最後に,該当する因子のスコアの総和として得られる各症例のスコアと,血行性転移あるいは局所再発との関連の度合を検討した.
血行性転移例と血行性転移をみない例を比較した結果,有意差を認めた臨床病理学的因子は,肉眼型,環周率,腫瘍長径,深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲,術前CEA値であつた.これら因子の血行性転移に及ぼす重みを多変量解析にて検討すると,その影響が重い因子は,リンパ節転移陽性,深達度se,a2以上等,癌の進行度に関する因子であつた.一方,局所再発例と局所再発をみない例を比較した結果,年齢,占居部位,肉眼型,組織型,環周率,深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲の各因子で有意差を認めた.このうち,局所再発に及ぼす影響が重い因子は,肉眼型4,5型,組織型por,年齢60歳代,占居部位P等,癌の性質,性格に関する因子であつた.
各症例のスコアを,該当する因子のスコアの総和として求め,血行性転移あるいは局所再発の有無と比較すると,関連性を認め,本スコアは,直腸癌術後の血行性転移あるいは局所再発予知に有用との結果を得た.

キーワード
直腸癌, 血行性転移, 局所再発, 再発予知, 数量化II類


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