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日外会誌. 89(5): 752-756, 1988


原著

体外循環下心臓手術におけるPlasma cyclic AMPの動態

山口大学 医学部第1外科

江里 健輔 , 壺井 英敏 , 宮本 正樹 , 藤村 嘉彦 , 森 文樹 , 近江 三喜男

(昭和62年6月15日受付)

I.内容要旨
cyclic AMPは種々なホルモンのsecond messengerとして知られ,カテコラミンを投与すると,心筋細胞内のcyclic AMP値が上昇すると言われている.冠動脈バイパス20例,弁膜症12例,計32例を対象とし,術前後にplasma cyclic AMPを測定し, plasma cyclic AMP値と疾患および大動脈遮断時間との関連について検討した.
plasma cyclic AMP値は弁膜症および冠動脈バイパス例のいずれにおいても体外循環終了直後に最も高く,以後漸減した. cyclic AMPの変動幅は弁膜症が冠動脈バイパス例より,また,大動脈遮断時間60分以上のものがそれ以下より著明で,手術侵襲の大小の差がplasma cyclic AMP値に影響したものと考えられた.
バイパス枝数別にcyclic AMPをみると, 3枝バイパス例が, 1枝あるいは2枝バイパス例に比し,術後1,3時間目に高値となり, 1枝および2枝バイパス例との間に有意差が認められた.また,⊿plasma cyclic AMP値は大動脈遮断時間や術前の駆出率と良い相関を示した.このことより, plasma cyclic AMP値を術前後に測定することは心機能の状態を知り,術後管理に有用であろう.

キーワード
cyclic AMP, 冠動脈バイパス, 弁膜症, 大動脈遮断時間


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