[書誌情報] [全文PDF] (2029KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 89(5): 747-751, 1988


原著

生体弁ステント求心性移動に対する臨床的研究

東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所 循環器外科

秋山 一也 , 沢谷 修 , 今村 栄三郎 , 遠藤 真弘 , 橋本 明政 , 小柳 仁

(昭和62年6月8日受付)

I.内容要旨
再手術時に摘出した僧帽弁位異種大動脈弁におけるステント求心性移動に関して臨床的に検討した.Hancock弁23個,Angell-Shiley弁10個, Carpentier-Edwards弁9個を対象とした.体内の移植期間は1~12年,平均7.7年であった.摘出弁のステント求性性移動の程度をステントの垂直方向に対する傾斜角度の最大値(IBA)を計測することによつて評価した.測定されたIBAと術後経過年数,生体弁の種類,生体弁のサイズ,左室収縮末期容量(LVESV)との関係を統計学的に検討した. IBAと経過年数との関係では弱い正の相関(Y=0.99X +7.8)が存在し,術後8年以上経過例と7年までの症例の間には, IBAはそれぞれ12.7±4.2度, 16.9±5.5度で有意差を認めた(p<0.05).生体弁の種類とIBAの間には有意差は存在しなかった.サイズでは31Mのみが10.3±5.4度で他のサイズに比較して小さい値を示した(p<0.05). LVESVとIBAの間には弱い負の相関(Y=-0.056X +21)が存在し, LVESVが小さいとIBAは高値をしめす傾向を示した.
ステント求心性移動はステントのデザイン,材質と関係なく発生し,その程度は経年的に進行し術後経過年数が8年以上の症例で高度に認められ,原因としてはステント周囲の左室壁による圧迫が考えられた.

キーワード
生体弁, 再弁置換, 摘出弁, ステントクリープ


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。