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日外会誌. 89(5): 641-645, 1988


原著

抗癌剤による腫瘍縮小効果と生存期間との相関性

金沢大学 がん研究所外科
*) 昭和大学付属豊洲病院 

高橋 豊 , 草間 悟*) , 磨伊 正義

(昭和62年5月30日受付)

I.内容要旨
化学療法の効果判定が,腫瘍縮小効果と化学療法後生存期間の両者から判定することが可能であつた胃癌肝転移12例,大腸癌肝転移5例,計17例について, これら2つの効果は相関するか否かを検討した.その結果,腫瘍縮小効果としてCR, PRを得た5例の生存期間は4~15月,平均8.4±4.3月,NCの4例では6~15月,平均9.8±4.1月, PDの8例では2~12月,平均8.0±3.7月となり,腫瘍縮小率から得た効果と生存期問とは相関しないことが明らかになった.さらに化学療法の前と後の二つの時期に腫瘍マーカーダブリングタイムを算出することが可能であった5例について化学療法の前と後の値を比較した.その結果化学療法前と化学療法の効果が消失した後のダブリングタイムの差はほとんどなく,発育速度は化学療法によつて本質的には変化しないものと判定された.癌患者の生存期間は,化学療法の有無にかかわらず,癌の発育速度に左右されるという事実から,癌化学療法の効果を生存期間の長短によつて判定するには,個々の症例の発育速度を考慮する必要があることが明示された.

キーワード
癌化学療法の効果判定, 腫瘍縮小効果, 生存期間, 癌の発育速度

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