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日外会誌. 89(4): 608-612, 1988


原著

超音波Bモード法による下肢深部静脈血栓症の診断に関する研究

鳥取大学 医学部第2外科 (主任:森 透教授)

野津 長

(昭和62年5月23日受付)

I.内容要旨
超音波Bモード法で,立位および水平仰臥位における大腿静脈横断面を描出して,その径を計測した.立位における大腿静脈横断面の径を水平仰臥位のそれで割つた商を大腿静脈拡張能係数(FemoraI Vein Distensibility Index,FVDI)と定義し,これを下肢静脈疾患の診断に応用することを試みた.健康成人14例28肢のFDVIは2.83±0.83なのに対し,下肢深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis,DVT)の21症例23肢では1.26±0.18と低下した(p<0.001). 
しかし疾患群19例の対側健常肢19肢についてのFDVIは2.28±0.65となり対照群との間に有意差は認められなかつた.また静脈造影により確認した閉塞部位を骨盤部,膝窩下腿部ならびに下肢全体に亘るものの3群に分類して比較検討したが,閉塞部位とFDVIの関係を見いだすことは出来なかつた.体位変換により生じる静脈内径の変動を数量化した大腿静脈拡張能係数を導入することにより,超音波による下肢深部静脈血栓症の診断は非侵襲的で簡便,かつ客観的になり,90.6%の診断精度が得られた.

キーワード
深部静脈血栓症, 超音波診断, 大腿静脈拡張能係数


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