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日外会誌. 89(4): 602-607, 1988


原著

内胸動脈―冠動脈バイパス手術の効果
―左室壁運動を指標とした検討―

*) 名古屋大学 胸部外科
**) 立市岡崎病院 外科
***) 県立多治見病院 心臓血管外科
****) 公立陶生病院 胸部外科

保浦 賢三*) , 岡本 浩*) , 関 章**) , 小川 裕***) , 星野 元昭****) , 阿部 稔雄*)

(昭和62年5月14日受付)

I.内容要旨
内胸動脈(IMA)を冠血行再建術に用いるにあたり従来より問題とされてきた供給血流量の点について検討した.対象は有意な冠動脈狭窄を示さずかつ正常心機能を有する12例(正常群)とIMAを左冠動脈前下行枝にバイパスした19例(IMA群)とした.方法は術前術後にえられた左室造影像より左室駆出率と左室局所収縮率(radialshortening)を算出し,正常群よりえられた値と比較した. radialshorteningは面積重心法を用いて60本の線分を計測したが,この総和は左室全体の収縮率である左室駆出率と極めて高い相関係数を示す回帰式がえられた.またIMA群19例のうち17例において術中にIMAのfreeflowを測定した結果,従来のIMAの理想的なバイパスグラフトとしての条件である100ml/minを満足する症例は少なく平均値で57.6ml/minと低値であった.しかしながら, IMA群は左室駆出率においてもradialshorteningの面でも術前は正常群よりも有意に低下を示すにもかかわらず,術後は改善して正常群との差は概ね消失した.以上の結果より,IMAの供給血流量に関する問題は従来懸念されてきたほどの重大性はなくむしろ術中のfreeflowの測定値が剥離操作などによるspasmにより不確実で信頼性の低いものと考えられた.

キーワード
内胸動脈―冠動脈バイパス, 内胸動脈流量, radial shortening, 面積重心法, 左室局所収縮率


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