[書誌情報] [全文PDF] (2370KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 89(3): 381-387, 1988


原著

肝再生時の過酸化脂質の変動とCoQ10投与効果

*) 広島大学 医学部第2外科
**) 広島大学 医学部第1生化学

丸林 誠二*) , 奥 純一*) , 土肥 雪彦*) , 越智 主計*) , 山田 一夫**) , 川崎 尚**)

(昭和62年4月8日受付)

I.内容要旨
ラット肝70%切除後の残存肝再生過程における肝エネルギー代謝,過酸化脂質,内在性抗酸化物質およびDNA合成能の変動とこれに及ぼすCoQ10投与効果を調べ,以下の結果を得た.
1. 再生肝の過酸化脂質は肝切後1日で正常値の2.5倍, 2日で2.3倍と増加した後, 5日で正常値まで下降した.一方, CoQ10投与は1日, 2日後の過酸化脂質生成を完全に正常値に抑制した.
2. 脂溶性抗酸化物質であるCoQ10, CoQ9およびα-Tocopherol (α-Toc) は肝切1日でそれぞれ50%, 32%および32%の減少が認められ,水溶性抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)も31%減少し,肝切2日後も減少が持続した. CoQ10投与は再生肝のCoQ10レベルを正常値の13.7倍高く維持し,肝切除後のこれら抗酸化物質の減少を完全に抑制した.
3. 肝ATPレベルは肝切除1日および2日後には48%の減少が認められ,肝切除後5日, 7日と緩徐な回復が認められた. CoQ10投与は1日後のATP低下を低くとどめると同時に, 2日後のATP合成を促進しEnergy change, アデニンヌクレオチド総量を高く維持することができた.
4. 再生肝のDNA合成は直線的に増加し,肝切除後1日目は1.7倍, 2日目には2.4倍となったが,CoQ10投与は1日目のDNA合成能には影響を示さなかったが, 2日後のDNA合成能を4.8倍と著明に増加させた.
これらの実験結果は肝再生過程で生じた過酸化脂質が細胞障害を引き起こす要因となりうることを示唆していると同時にCoQ10が臨床上極めて有用な治療手段となりうる可能性を示唆している.

キーワード
再生肝, 過酸化脂質, Coenzyme Q10, 肝エネルギー代謝, ビタミンE

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。