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日外会誌. 89(2): 227-237, 1988


原著

膵切除再建術式の臨床的,実験的検討
―第1編 再建法と胆道感染―

京都大学 医学部第1外科学教室(指導:戸部隆吉教授)

塩田 昌明

(昭和62年3月11日受付)

I.内容要旨
膵切除再建法別にみた胆道感染,とりわけ吻合部狭窄等の器質的原因の明らかでない,再建法そのものに由来する胆道感染の発生頻度およびその病態を解明するために,今永法を基盤とした京大第1外科法(I型再建法)とWhipple法,Child法(II型再建法)とを比較しつつ,臨床的,実験的検討を行つた.
臨床的検討では,I型再建法21例,II型再建法18例に追跡調査を行い遠隔時の胆道感染率を検討した.また,I型再建法とII型再建法の34例に対してdual isotopic scintigraphy下で肝胆道シンチグラフィーを施行し,腸管内胆汁移送動態を解析した.実験的検討では,イヌを用いて3群の胆道再建モデル(十二指腸吻合群,空腸吻合群,Roux-Y空腸吻合群)を作成し,胆道感染発生状況について組織学的,生化学的,細菌学的に検索した.
I型再建法とII型再建法における胆道感染率は各々19.0%,33.3%であり,高度感染率は各々4.8%,27.8%であつた.肝胆道シンチグラフィーの解析では,I型再建法における腸管内胆汁移送動態は良好であつた.一方,II型再建法では,胆道腸吻合のための空置空腸に長時間に及ぶ著明な胆汁停滞が観察され,胆道感染の誘因となるとともにbiliocibal discrepancyの原因ともなつていると推察された.動物実験における胆道感染率は,Roux-Y吻合群に比して十二指腸吻合群,空腸吻合群がともに低率であり,食物の胆道内逆流が胆道感染の原因とは考え難かつた.
以上の結果より,I型再建法は食物の胆道内への逆流が必発するにもかかわらず,臨床的にも,実験的にも胆道感染が頻発する傾向を認めなかつた.一方,II型再建法は食物の胆道内逆流を防止するために空置空腸と胆道とが吻合されているにもかかわらず,胆道感染率はI型再建法より高い傾向が認められ,この原因として空置空腸内の著明な胆汁停滞が一因と考えられた.

キーワード
膵切除再建法, 胆道感染, 胆道再建, 空置空腸, 肝胆道シンチグラフィー


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