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日外会誌. 89(1): 72-83, 1988


原著

膵広範切除後の糖代謝の研究, 特に膵管閉塞線維化膵について

三重大学 医学部外科学第1講座(指導:水本龍二教授)

北村 純

(昭和62年2月14日受付)

I.内容要旨
雑種成犬を用い,膵管を結紮して線維化膵を作成し,その4週後に膵管再建と50%以上の膵切除を行って,主として糖代謝の面から,残存膵の機能的並びに形態的変化を検索し,以下の結果を得た.
1)膵管結紮後4週目で膵の線維化率は増加し,インスリン及びグルカゴン分泌は正常犬に比べて有意に低下したが, これらの変化はいずれも膵管再建により回復するのが認められた.
2)膵管結紮後4週目に膵管再建とともに膵切除を行うと,①84%以上の膵切除では術後早期よりインスリン及びグルカゴン分泌は著明に低下して糖尿病を発現し,残存膵の島細胞はB,A,D各細胞とも著明な変性が認められた.②84~63%膵切除ではインスリン及びグルカゴン分泌は術後早期には低下したが一時回復に向い,その後再び低下して所謂Sandmeyer型糖尿病を発現した.膵島は小型化し, B細胞の変性と減少が認められ, A,D細胞の比率は増加した.③63%以下の膵切除ではインスリン及びグルカゴン分泌は術後早期に一時やや低下したが共に回復し,糖尿病の発現はみられず,形態的にも膵島には著変は認められなかった.
正常犬では74%以上の膵広範切除で糖尿病を発現することが明らかにされているが,本研究で,膵管結紮後4週目の線維化膵は63%以上の膵切除により糖尿病を発現することが明らかとなり,糖代謝の面からみるとその切除限界は正常膵より約10%低下していた.

キーワード
膵管結紮, 線維化膵, 膵管再建, 膵内分泌機能, 膵切除後糖尿病


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