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日外会誌. 89(1): 30-38, 1988


原著

消化器癌におけるエノラーゼ・アイソザイム

*) 刈谷総合病院 外科
**) 名古屋市立大学 医学部第1外科
***) 愛知県がんセンター 病理
****) 愛知県コロニー研・生化 

宇佐見 詞津夫*) , 林 周作*) , 大久保 憲*) , 小谷 彦蔵*) , 由良 二郎**) , 灰本 元***) , 加藤 兼房****)

(昭和62年1月20日受付)

I.内容要旨
γ-エノラーゼはいわゆるNeuron-Specific Enolaseとも呼ばれ,神経系,神経内分泌系およびそれらの腫瘍に高濃度に分布することが知られている.しかしγ-エノラーゼが他の非神経系組織にも局在し,また肺癌の一部にも比較的高濃度に存在することが既に報告され,ある種の神経細胞ではそれらの分化と密接な関連を有することが明らかにされてきている.
今回我々は消化器癌のα及びγ-エノラーゼの局在を免疫組織化学的に検討し,同時に, EIA法によつてそれらの組織中のα及びγ-Subunitを定量し免疫組織化学所見と対比した.そして消化器癌におけるγ-エノラーゼの局在の意義につき検討した.
其の結果, α-エノラーゼは正常粘膜及び胃癌・大腸癌の全ての症例の癌上皮に局在していた.
γ-エノラーゼは大腸癌では高分化型腺癌の腺管上皮の一部に,中分化型腺癌では前者よりやや広汎な腺管上皮に局在していた.胃癌では中分化型腺癌の腺管上皮の一部に低分化型腺癌では癌細胞のほとんどに局在が認められた.
以上の結果より, (1) 従来より考えられてきたようにγ-エノラーゼを神経原性腫瘍と神経内分泌系腫瘍に特異的な腫瘍マーカーとされていたが,我々の臨床研究では消化器癌にもγ-エノラーゼ隔性細胞を認めている.
(2) 正常胃・大腸粘膜上皮はαのみ局在しているが,癌化すると一部の癌上皮にγ-エノラーゼが出現し,分化度が低くなるにつれてγ-エノラーゼ陽性細胞癌が増加した.

キーワード
腫瘍マーカー, γ-エノラーゼ, 消化器癌


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