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日外会誌. 88(11): 1619-1623, 1987


原著

乳癌における生検の予後におよぼす影響

*) 信州大学 医学部第2外科
**) 長野県がん検診センター 

藤森 実*) , 千賀 脩*) , 寺井 直樹*) , 宮川 信*) , 飯田 太*) , 土屋 真一**) , 小池 綏男**)

(昭和62年1月16日受付)

I.内容要旨
1976年1月から1980年12月末までの5年間に信州大学第2外科において根治手術が施行された乳癌初回手術例131例について,生検の有無および種類と予後との関係について検討した.
各種生検法と予後の関係をみると切開生検は生検なし群,細胞診群,摘出生検後癌残存(一)群に比べ,有意に再発率が高く予後に悪影響を及ぼす可能性が考えられた.
穿刺吸引細胞診施行群は,生検なし群に比べ再発率に有意差はなかつたが,根治手術までの期間別に予後との関係を検討すると穿刺吸引細胞診後根治手術までの期間が3週を過ぎると有意に再発率が上昇し,予後に悪影響を与えることが示唆された.
各種生検法と再発形式をみると,穿刺吸引細胞診は他の方法に比べ遠隔転移が多い傾向が認められた.
穿刺吸引細胞診施行群では硬癌,粘液癌の再発率が高い傾向がみられた.
以上の成績より,穿刺吸引細胞診は予後に与える影響が少ないと考えられるが,3週間以内に根治手術を施行しないと著しく再発率が高くなるので,病理学的裏付けを必要とする場合には,本法によつて診断を確定したのち,早期に根治手術を施行するのが最も良い方法である.

キーワード
乳癌, 再発率, 穿刺吸引細胞診, 摘出生検, 切開生検


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