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書誌情報]
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日外会誌. 88(10): 1503-1508, 1987
症例報告
「炎症性」腹部大動脈瘤の外科治療
I.内容要旨「炎症性」腹部大動脈瘤の2手術治験例について述べるとともに,病因,診断,治療の問題点について述べた.本症は1972年,Walkerらによりはじめて「炎症性」腹部大動脈瘤(inflammatory aneurysm of the abdominal aorta) の用語が用いられた.肉眼的には大動脈周囲線維症を特徴とし,組織学的には高安動脈炎との鑑別がつき難い.赤沈値の亢進を示すことやステロイドにより症状が寛解する例もあることもあり両疾患の関連性が示唆される.
通常の腹部大動脈瘤に比し本症では腹痛,体重減少,赤沈値の亢進を見ることが多い.断層エコーでは大動脈周囲にエコー輝度の低いマントル状の層を認め大動脈周囲血腫との鑑別が必要である.contrast CTでは大動脈周囲に血液と同様な濃度で造影されるマントル状の層が見られ,破裂による血液漏出,あるいは限局性解離との鑑別が必要である.
手術所見では線維性に肥厚,白色化した動脈瘤壁の周囲組織への浸潤,癒着が特徴的であり,剥離を最小限にとどめ副損傷の防止に努めることが本症手術のボイントである.
キーワード
炎症性腹部大動脈瘤, 大動脈周囲線維症, 高安動脈炎
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