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日外会誌. 88(10): 1466-1478, 1987


原著

膵液diversionの胃酸分泌および消化管ホルモン分泌におよぼす影響に関する実験的研究

東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

内藤 広郎 , 佐々木 巌 , 土屋 誉

(昭和61年12月8日受付)

I.内容要旨
膵液を十二指腸から上部空腸にdivertした場合の胃酸分泌および消化管ホルモン分泌の変動について検索するためにHeidenhain pouch(HP)を作成した犬15頭を用いて2種類の膵空腸吻合術を行つた.8頭はTreitz靱帯から15cm肛門側の空腸40cmを空置してRoux-Y型で再建し,これを膵液diversion(PJD)モデルとし,RY群とした.他の7頭はRY群と同様の空腸40cmを用い,PJDにならぬように膵空腸十二指腸吻合術を行い,INT群とした.これらに対して,膵内外分泌機能について検索した後,食事負荷試験におけるHPからの酸分泌および血中消化管ホルモン分泌動態について検討した結果,以下の成績を得た.
1.RY,INT群ともにIVGTTからみた膵内分泌機能およびBT-PABA負荷試験ならびに食後の血漿中性脂肪値の変動からみた膵外分泌機能はいずれも良好に温存されることが確認された.従つて,本術式を用いて純粋にPJDの影響を検討できるモデルを作成することが可能であると考えられた.
2.RY群では術後は有意の酸分泌亢進がみられたが,INT群では酸分泌に変動がみられなかつた.
3.ガストリン分泌はRY,INT群ともに術前後で変動しなかつた.GIP分泌は,RY群では術後有意の抑制がみられたが,INT群では有意の変動がみられなかった.enteroglucagon分泌はRY,INT群ともに術後有意に亢進した.これらの成績から,RY群の酸分泌亢進にはGIP分泌抑制が関与している可能性が示唆された.
以上の検討から以下のような結論を得た.PJDにより食後の胃酸分泌亢進がみられることが明らかになつたので,臨床的に膵空腸吻合術を行う場合には,膵液を十二指腸に流入させる術式の方がより生理的であると考えられた.

キーワード
膵液diversion, 胃酸分泌, 膵内外分泌, 消化管ホルモン

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