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日外会誌. 88(8): 928-938, 1987


原著

消化器癌患者における腫瘍抽出抗原を用いた細胞性免疫応答検索の臨床的意義に関する研究

千葉大学 医学部外科学教室第1講座 (主任:奥井勝二教授)

呉 正信

(昭和60年2月9日受付)

I.内容要旨
消化器癌患者172名(胃癌135名,大腸癌37名) について,癌組織よりHypotonic salt extraction(HSE)法, および3M-KCL extraction (3M-KCL)法にて抗原を抽出し,癌患者末梢血リンパ球でリンパ球幼若化(LP)反応,および遅延型皮膚反応を施行した.LP 反応の至適条件は10μg• protein/mlの抗原濃度, 4日間培養であり, Autologous抽出抗原とAllogenic抽出抗原に対するLP反応はr=0.758 (p<0.005)と相関を示した.一方3M-KCL法およびHSE法での抽出抗原に対するLP反応もr=0.770 (p<0.001)と相関を示した.LP反応での癌患者の陽性率 (S.I.~2.0 ) はHSE 抗原11/38例(28%),3M-KCL抗原6/29例(21%)であり, どちらの抗原のLP反応においても癌患者の臨床病期の進行に伴い反応性は上昇するがstage IVではむしろ低下した.治癒切除後のLP反応の推移では腫瘍切除に伴い術後1週間で反応性は消失し,術後3カ月までその反応性の回復は認めない.LP反応に関与する抽出抗原の活性局在をSephadex G-200のゲル濾過法にて検討した所, HSE,3M-KCL抗原ともに5つの分画に分かれ,第V分画(分子量1万以下)にその活性局在を認めた.一方,リンパ球のうち,この抽出抗原に対しLP反応を示すのはT-cellである事が確認された.in vivoでの遅延型皮膚反応では,胃癌,大腸癌はHSE抗原で26%,22%,3M-KCL抗原で30%,28%の腸性を認めた.非癌患者では3M-KCL抗原に対し1例の陽性を認めたのみであった.LP反応と皮膚反応との関係では,両者に陽性あるいは陰性を示したのはHSE法で22/25例(88%),3M-KCL法で21/25例(84%)と高い特異性を示した.この様にHSE法および3M-KCL法によるAllogenic抽出抗原を用いたLP反応,皮膚反応において癌患者は20~30%の腫瘍特異的と考えられる陽性率を示し, その反応性は臨床病期を強く反映した.

キーワード
細胞性免疫能, 腫瘍免疫, リンパ球幼若化反応, 腫瘍抽出抗原, 皮膚テスト

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