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日外会誌. 88(7): 907-911, 1987


症例報告

細菌感染性腹部大動脈瘤の1手術治験例

福井医科大学 第2外科

石原 浩 , 山森 祐治 , 井隼 彰夫 , 千葉 幸夫 , 村岡 隆介

(昭和61年8月23日受付)

I.内容要旨
抗生物質による治療に1カ月以上抵抗した原因不明熱を主徴とする71歳男性の細菌感染性腹部大動脈瘤の1例を経験した. 患者は他院での感染に対する加療中に全身CT scanの撮影を受け腹部大動脈瘤と診断され, 当科に転院となった. 直ちにDigital Subtraction Angiographyを施行し, 腎下部腹部大動脈に嚢状を呈する大動脈瘤が認められ, 細菌感染性腹部大動脈瘤と診断した. 動脈血細菌培養検査は陰性であつた. 手術は動脈瘤壁を開くことなく無菌的になるように配慮して, 瘤の摘出を行い, 腎下部腹部大動脈から両側総腸骨動脈へY字型人工血管置換術を行なつた. 摘出した標本からはAcinetobacter calcoaceticusが検出され, 菌の感受性試験に基づいて術後6カ月間抗生物質の投与を施行した. 術後17カ月の現在元気に生存中である.
細菌感染性腹部大動脈瘤の発生頻度は少なく, 破裂性であることも多い. 直接手術死亡率も動脈硬化性に比べて著しく高く, 術後遠隔期においても感染のために動脈瘤の再発を来すことが少なくない. 診断確定後直ちに瘤を可及的に閉鎖状態のまま摘出すること, 確実な血行再建を行うこと, 術後長期の化学療法を行うことなどが手術成績向上のための要点であると思われた.

キーワード
細菌感染性腹部大動脈瘤, mycotic aneurysm, 炎症性動脈瘤


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