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日外会誌. 88(7): 885-893, 1987


原著

僧帽弁疾患と心房性ナトリウム利尿ペプチド

名古屋大学 医学部胸部外科
*) 名古屋大学 環境医学研究所第2部門

天野 謙 , 阿部 稔雄 , 松井 信夫*)

(昭和61年10月11日受付)

I.内容要旨
左房と心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) 分泌・循環血液量調節の関係をみる為, ANP・ADH・ACTH・PRA・アルドステロンの血中濃度と腎機能を, 開心術前後経時的に26例の患者をMVR群 (n=12) と非MVR群 (n=14) に分けて検討した. 術前ADH, ACTHには有意差はなかつたが, ANPはMVR群では96. 9±16. 2pg/mlと非MVR群22. 8±8. 6pg/mlに比し有意に高く (p<0.01) , アルドステロンも高値を示した (p<0. 02) . 体外循環中はANPは大動脈遮断中低値となり, 他のホルモンは導入直後に上昇し, 冷却中は漸減し, 加温と共に再増加する傾向がみられたが, 腎機能ではCcrは低下, 時間尿量・FENa・FEKは著増し, ホルモン濃度との間に解離がみられた. 主として低体温によるホルモン感受性の低下, 尿細管尿吸収能の低下が原因と思われた. また心臓部位別ANP濃度を術中経時的に6例につき検討し, 冠静脈血>右房血>左房血>末梢血の順で濃度が低下し, 冠静脈血では末梢血の数倍~10数倍の高値を示し体外循環後急激に低下するという結果を得た. 心房組織内ANP濃度もMVR群では右心耳61.8±11.9nmol/g湿重量 (n=6) , 左心耳50.0±10.4nmol/g湿重量 (n=4) と, 非MVR群右心耳14.9±3.1nmol/g湿重量 (n=15) に比し有意に高値を示した (p<0.02, p<0.05) . MVR群での両心耳組織内, 及び術前の血中AMP濃度の増加, RAA系の亢進は, この疾患群での体液バランス管理に特別な配慮が必要である事と, ANPが左房負荷と循環血液量調節との関連に重要な意義を有する事を示唆していた.

キーワード
ANP, 左房負荷, 循環血液量調節

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