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日外会誌. 88(7): 872-884, 1987


原著

甲状腺髄様癌の免疫組織化学的研究
―ペプタイドホルモン産生を中心に―

慶應義塾大学 医学部外科学教室 (指導:阿部令彦教授)

別所 隆

(昭和61年9月11日受付)

I.内容要旨
甲状腺髄様癌60例を対象に, カルシトニン (CT) およびgastrin-releasing peptide (GRP) をはじめ5種のペプタイドホルモン, 5HT, CEA, 神経特異蛋白, モノクローナル抗体Leu-7の免疫組織化学的検索を行い, 各種産生物質の腫瘍細胞内局在を検索するとともに, 一部の症例では臨床像との関連についても検討を行つた. 甲状腺髄様癌は, 多種の産生物質を有する例の多いことが確認され, 特にCT, CEAは検索症例全例が陽性であつた. GRPは57例中50例 (87.7%) に陽性で, 大多数の甲状腺髄様癌がGRP産生能を有することが分つた. またGRPは腫瘍細胞内のみならず,  C-細胞過形成巣内にも存在することを確認するとともに, 腫瘍細胞およびC細胞過形成巣において, 同一細胞内にCTとGRPを同時に認め, 1つの腫瘍細胞内に複数の産生物質が存在する確証を得た. その他ソマトスタチン (SS) , substance-P, β-MSH, 5-HTの腫瘍細胞内存在を認めたが, SSは59例中32例 (54.2%) と高率であつた. モノクローナル抗体Leu-7の陽性率も44例中43例 (97.7%) と高く, 組織学的レベルでの腫瘍マーカーとしての可能性が示唆された. 神経特異蛋白ではneuron-specific enolase (NSE) が47例中32例 (68.1%) に陽性を示し, 甲状腺髄様癌が神経内分泌性格をもつことを支持した. 臨床像との関連では, 臨床的に極めて悪性度が高く, かつ細胞形態学的に未分化に近い剖検例2例ではペプタイドホルモンの染色性の低下がみられ, 髄様癌が未分化傾向をとるにしたがい, 神経内分泌腫瘍の特異性は失われていくことが示唆された. 家族例と散発例との比較では, 家族例の方に多種産生物質を有する傾向にあつた.

キーワード
甲状腺髄様癌, ホルモン産生腫瘍, 神経内分泌腫瘍, 腫瘍マーカー

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