[書誌情報] [全文PDF] (3146KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 88(6): 755-760, 1987


原著

心筋保護下におけるラット心筋細胞内Ca++-ATPase活性の変動

京都府立医科大学 第2外科

佐藤 伸一 , 河合 隆寛 , 北浦 一弘 , 大賀 興一 , 岡 隆宏

(昭和61年7月29日受付)

I.内容要旨
cardioplegiaによる心筋の虚血障害は形態学的な微細構造上の変化だけでなく組織細胞化学的手段により機能面からも評価することが望ましい.そこでCa++代謝と密接に関連し,エネルギー利用系に必要なCa++-ATPaseに着目した. 
in situで心筋細胞内のCa++-ATPase活性をsubcellular levelで評価する方法としてクエン酸鉛法がある.この方法をもちいてGIK cardioplegia下のラット心筋の経時的なCa++-ATPase活性を検討した.
その結果,chemical arrest直後,つまり正常のラット筋細胞内では,ミトコンドリア,筋小胞体,myofilamentにCa++-ATPase活性が認められるが,このミトコンドリアのCa++-ATPase活性は,15分後さらに増加したが,30分を境に徐々に低下し,120分で完全に消失した.また,筋小胞体,myofilamentにおけるCa++-ATPase活性も120分では完全に消失した. 
これらの所見は,通常の電子染色による電顕組織上における虚血性変化の出現に先行した.
以上のことから本法は,cardioplegiaに使用する液の成分や投与法を鋭敏に評価する手段となり得ると思われる.

キーワード
cardioplegia, Ca++-ATPase, クエン酸鉛法, 筋小胞体, ミトコンドリア


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。