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日外会誌. 88(6): 701-709, 1987


原著

出血性ショック時の急性胃病変発生機序に関する研究
―とくに胃壁血流変動に及ぼす胃粘膜PGE2と胃粘膜NAの関連について―

神戸大学 医学部第1外科

福岡 秀治 , 裏川 公章 , 斉藤 洋一

(昭和61年7月31日受付)

I.内容要旨
脱血ショック下での急性潰瘍発生過程における胃壁血流の変動について,胃粘膜PGE2と胃粘膜NAとの関連より検討し,さらに外因性PGE2の潰瘍発生予防効果についても検討を加えた.実験は体重250g前後のWistar系雄性ラットを用い,24ml/kgの脱血を行つて以下の成績を得た.
1. 脱血30分後の胃壁血流量は約65%減,胃粘膜NA量は約25%減と有意に減少し, 一方胃粘膜PGE2量は脱血30分後に約26%増となつたが, 60分以後は著明な減少を示した.
2. 無処置ラットにNAを投与すると胃粘膜PGE2量は約100%の増加を示した.しかし脱血20分後,50分後にNAを投与すると各々の非投与の脱血単独30分後, 60分後の胃粘膜PGE2量と有意差を認めなかつた.
3. PGE2を脱血前に投与すると胃壁血流量と胃粘膜NA量の減少は抑制され,潰瘍発生も抑制された.一方indomethacin前処置では潰瘍指数は脱血単独群よりも上昇した.
以上より,脱血初期の胃粘膜PGE2量の増加は胃壁血流低下に対する生体の防御反応と考えられ,その一因として交感神経系の緊張の関与が示唆された.脱血後期の減少はhypoxiaの持続による合成障害の結果と考えられ,胃粘膜PGE2量の減少は潰瘍発生要因の一つと考えられた.

キーワード
出血性ショック, ストレス潰瘍, 胃粘膜PGE2量, 胃壁血流量, 胃粘膜 NA 量


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