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日外会誌. 88(6): 710-714, 1987


原著

血管造影による結腸癌の漿膜浸潤診断の臨床的意義

群馬大学 医学部第1外科(主任:長町幸雄教授)

飯島 俊秀

(昭和61年8月9日受付)

I.内容要旨
結腸癌35例に対し術前血管造影を施行し,結腸癌進達度を血管造影診断と肉眼的及び病理組織学的所見とを比較検討した.血管造影はプロスタグランディンE1 20μgを造影剤注入30秒前に動注し,病巣の存在部位によつて上腸間膜動脈又は下腸間膜動脈に,それぞれ76%ウログラフィン40~60ml,10~15ml注入して撮影した.血管造影所見を,(1)AG-S3:marginal artery & veinまでencasement,断裂等の所見のあるもの,(2)AG-S2:vasa rectaまで前記所見のあるもの,(3)AG-S1:vasa rectaの壁貫通枝まで所見のあるもの,(4)AG-S0:壁貫通枝にもほとんど所見のないものの4群に分類した.(1)肉眼的漿膜浸潤度との比較では,AG-S3:77.8%,AG-S2:91.7%,AG-S1:0%,AG-S0:100%であり,計82.9%に血管造影で診断可能であつた.(2)組織学的壁深達度との比較では,AG-S3:35.3%,AG-S2:16.7%,AG-S1:0%,AG-S0:100%で計32.4%の一致率であつた.(3)肉眼的S3,組織学的siについては全例血管造影で診断できた.(4)血管造影は,肉眼的漿膜浸潤度をよく現わしているが,組織学的壁浸達度との一致率は低い.これは腫瘍による炎症,癒着,線維化等の変化を現わしているものと考えられる.

キーワード
血管造影, 結腸癌, 漿膜浸潤診断


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