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日外会誌. 88(6): 663-674, 1987


原著

がんに対する温熱療法に関する実験的研究
―特に熱耐性について―

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)研究部門 指導:(服部孝雄教授)

吉原 辰也

(昭和61年7月24日受付)

I.内容要旨
温熱療法を施行する場合の問題点の1つである熱耐性に関して,FM3A細胞とC3H/Heマウスの実験系を用いたin vitroとin vivoの実験モデルを作製し熱耐性の誘導と,加温を繰返した場合,加温間隔により抗腫瘍性がいかに変化するかを検討した.FM3A細胞は42.0℃,43.0℃,44.0℃の各温度で温熱に対する強い感受性を示した.FM3A細胞はin vitroの実験で43.0℃,30分の加温では加温後12時間をピークとし,44.0℃,30分の加温では加温後12時間から24時間をピークとする熱耐性を獲得した.in vivoの実験でも,42.0℃,43.0℃,44.0℃の各温度で加温後少なくとも48時間までは熱耐性を獲得し,96時間後にはほぼ消失していることを認めた.加温を繰返したin vivoの実験では,42.0℃,43.0℃,44.0℃の各温度で96時間ごとの加温間隔で加温したときに最も強い抗腫瘍効果が認められた.24時間ごと,または,48時間ごとに加温を繰返しても増殖抑制効果は認められず,44.0℃,15分の加温を48時間ごとに繰返すと,腫瘍増殖は対照群に比し有意の促進を認めた.同様に43.0℃,30分の加温を24時間ごとに繰返したときも増殖促進傾向を認めた.また,各実験における生存日数の比較でもほぼ同様の結果を認めた.以上の実験結果より,熱耐性がまだ存在している時期に頻回の加温を繰返しても,腫瘍増殖の抑制効果が相加的,相乗的に加算されないことが明らかとなつた.したがつて,加温を繰返し施行する場合は,熱耐性が消失するに必要な時間を考慮に入れた間欠的な加温が望ましいと考えられる.

キーワード
温熱療法, 熱耐性, 加温間隔, FM3A 細胞

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