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日外会誌. 88(5): 569-576, 1987


原著

直腸癌術前照射における局注併用療法の治療効果

筑波大学 臨床医学系外科
*) 千葉大学 医学部第1外科
**) 放射線医学研究所 生理病理研究部

更科 広実*) , 轟 健 , 折居 和雄 , 大津 裕司**) , 岩崎 洋治

(昭和61年6月28日受付)

I.内容要旨
進行直腸癌21例に術前照射42.6Gyと,腫瘍内局注併用療法(抗癌剤と放射線増感剤)を行い,非照射群,照射単独群と臨床的病理組織学的に比較検討した.
注腸X線検査による腫瘍長径の変化は,照射単独群30.5%,局注併用群46.5%の縮小率を認め,両群間に統計的有意差が認められた.
切除標本における壁深達度の比較では,非照射群に比べ照射単独群28.6%,局注併用群52.4%の症例に深達度の改善がみられ,特に後者ではsmからpmまでにとどまる症例が多く認められた.
ew(癌先進部から手術的壁外剥離断端までの距離)の測定では,ew 2mm以下の症例は非照射群64.0%,照射単独群28.6%,局注併用群14.3%であつた.一方ew 5mm以上を示した症例はそれぞれ12.0%,28.6%,38.1%であつた.
リンパ節転移率は,非照射群56%,照射単独群43%,局注併用群38%であつた.とくに術前照射の行われた症例では,n2以上の遠隔リンパ節に転移率の低下傾向が認められた.
局注併用群の病理学的特徴として,癌巣の粘液変性から壊死崩壊・嚢胞状病変形成までの移行を示す退行性病変が認められた.また間質の変化として,照射単独群に比べ線維化や硝子化の少い傾向が示唆された.以上のことから,局注併用群における高度の腫瘍縮小効果や進行度の改善は,このような病理組織学的変化に対応するものと考えられた.

キーワード
直腸癌, 術前照射, 集学的治療, 腫瘍内局注療法


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