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日外会誌. 88(5): 529-542, 1987


原著

胃癌所属リンパ節の免疫組織化学的研究

岡山大学 医学部第1外科学教室(指導:折田薫三教授)

岡林 孝弘

(昭和61年6月4日受付)

I.内容要旨
担癌所属リンパ節の免疫学的抗腫瘍能を解析するため,胃癌所属リンパ節における各種免疫担当細胞サブセットの分布様式を検索した.すなわち, リンパ節の凍結切片にOKシリーズおよびLeuシリーズの諸種モノクローナル抗体をABC法の一次抗体として用いて免疫組織化学的染色を行った.転移陰性リンパ節の各モノクローナル抗体腸性細胞の分布様式は,対照のリンパ節に比較して類似しており,以下の如くであった.
paracortical area(以下PC)では,T細胞が多数であり,OKT3陽性(以下OKT3+)細胞,OKT4+細胞はびまん性,OKT8+細胞は散在性に認められた.sinusでは,上記のT細胞サブセットおよびOKT9+細胞,OKT10+細胞などが認められた.germinal center(以下GC),mantle zone(以下MZ),およびprimary follicle(以下PF)はB細胞領域で, OKia1+細胞, Leu12+細胞がびまん性に認められた.GCでは他にOKB7+細胞, OKT9+細胞,OKT10+細胞,Leu7+細胞が認められ, MZおよびPFではLeu8+細胞を認めた.OKia1+細胞は,PC,sinusでも散在して認められた.PC,sinusの脈管にOKM1+細胞は少数認められ,Leu15+細胞やLeu11b+細胞と類似していた.IL-2レセプター+細胞はPCの一部に散在して認められた.
第1群および第3群リンパ節のPC,sinusでT細胞サブセットを比較すると,第3群リンパ節でOKT4+細胞が多く,転移隔性リンパ節では,転移陰性リンパ節に比較して,OKT4+細胞の減少とOKT8+細胞の増加を認めた.
組織二重螢光染色法により,OKT4+細胞の約1/2がhelper T細胞であることが判明した.また,OKT8+細胞の多くはcytotoxic T細胞またはそのprecursorであることが判明した.免疫賦活剤OK-432あるいはPSKを術前腫瘍内投与することにより,所属リンパ節のIL-2レセプター+細胞あるいはOKM1+細胞,OKT4+細胞などが増加して,抗腫瘍能が増強された.

キーワード
胃癌所属リンパ節, 免疫組織化学的検索, モノクローナル抗体, リンパ球サブセット


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