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日外会誌. 88(4): 453-459, 1987


原著

AFP 変動による術前 TAE の早期効果判定に関する研究

長崎大学 医学部第2外科

冨岡 勉 , 土屋 凉一 , 原田 昇 , 角田 司 , 井沢 邦英 , 山口 孝 , 山本 賢輔

(昭和61年1月13日受付)

I.内容要旨
AFP産生肝細胞癌に対し術前TAEを行い手術を施行する場合,TAEの効果が実際どの程度であるのか正確に把握できるならば,手術の時期あるいは再度TAEを行うかを決める上で重要な意義を持つてくる.本論文において我々はAFP産生肝細胞癌に対する術前TAEの効果を早期に判定する目的で,AFP産生肝細胞癌18例に対し血清AFP値変動の型分類及び組織学的検索を行い,TAEにおける腫瘍壊死率と壊死に影響を及ぼすと考えられる因子と,AFP変動型との関連を検索し以下の結論を得た.
1.TAE後のAFPの変動は5型に分類できた.
I型(無反応型):全くTAEによる影響がみられず短期間内にAFPの上昇を認めるもの.
II型(波行型):ほぼ同じ値で増減をくりかえすもの.
III型(漸減後上昇型):1度AFPの値の低下をみるが再上昇を示すもの.
IV型(漸減後正常値型):理論的半減期曲線に遅れるようにしてAFP値の減少を認めるが最終的に正常値まで下がつてくるもの.
V型(半減期型):理論的半減期曲線に沿つて減少していき正常値まで下がるもの.
2.AFP変動の各型と壊死率及びTAEに影響を及ぼす腫瘍の大きさ,娘結節の有無等の各因子とは密接な関連を持つていることが判明した.
3.TAE当日及び1週間後のAFP値を比較した場合,AFP値が前値の1/2になつても腫瘍全体としては70%程度しか壊死に陥つておらず,1週間後に前値の1/4以下になつた場合初めて腫瘍が完全壊死に陥つたことを期待できるものと考えられた.
4.免疫組織化学的にnecrotic cellを含めたAFP産生細胞の同定は,TAE後の切除例では困難で,AFPの局在によるviabilityの判定はできないものと考えられた.
5.TAE後の壊死効果を早期に知ることは手術の適応,時期,術式を決める上で参考になり,術前TAEの意義をさらに高めるものと考えられた.

キーワード
肝動脈塞栓術, AFP, 肝細胞癌


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