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日外会誌. 88(4): 440-446, 1987


原著

剖検例における胃癌転移様式に関する研究
ーとくに,組織型と宿主年齢による変化ー

東京医科歯科大学 医学部第2外科学教室(主任:三島好雄教授)

坂本 眞

(昭和61年7月16日受付)

I.内容要旨
原発巣摘除がなされておらず,胃癌を第一義的死因とした173剖検例(20歳~97歳)を対象として,組織型ならびに宿主年齢因子の面からその進展様式の検討を行つた.この検討では腹膜播種性転移,経門脈性肝転移,リンパ節転移の3つの転移経路をとり上げ,各々の経路につき転移の有無だけではなく,その程度を4段階に評価し比較した.
分化型癌と未分化型癌との比較では,分化型癌に高度の肝転移を示すものが有意に多く,未分化型癌には腹膜播種性転移およびリンパ節転移の高度のものが有意に多いという組織型による転移進展様式の相違が明瞭に示された.
宿主年齢による転移様式の変化については,高齢者,非高齢者の二群に分けての対比検討を各組織型で行つた.腹膜播種性転移では分化型癌でも未分化型癌でも高齢者群に転移の程度の軽いものが有意に多かつた.肝転移では分化型癌でも未分化型癌でも二群間に有意の差はなかつた.リンパ節転移については分化型癌では二群間に差はなかつたが,未分化型癌では高齢者群に転移の程度の軽いものが有意に多かつた.
今回の検索により,胃癌の転移進展形式には癌側因子としてその組織型が,宿主側因子として患者の加齢が大きく関与することが示された.

キーワード
胃癌, 高齢者胃癌の遠隔転移, 未分化型胃癌の遠隔転移, 分化型胃癌の遠隔転移, 胃癌剖検


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