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日外会誌. 88(3): 340-348, 1981


原著

縦隔原発の Malignant Germ Cell Tumor の臨床的検討

京都大学 結核胸部疾患研究所胸部外科学教室

三宅 正幸 , 伊藤 元彦 , 光岡 明夫 , 和田 洋己 , 青木 稔 , 田村 康一 , 人見 磁樹

(昭和61年5月23日受付)

I.内容要旨
縦隔原発のgerm cell tumor(GCT)は,縦隔腫瘍全体の約1割を占め,そのうち13~30%が悪性の腫瘍で,大別すると,seminomaと非seminoma性腫瘍の2つに分けることができる.前者は,主として放射線感受性の高い腫瘍で,腫瘍摘出術及び放射線療法の合併療法により,比較的予後の望める腫瘍であるが,後者は,放射線治療に期待し難く,有効な治療法が模索されてきた極めて悪性度の高い腫瘍である.しかしcis-dichloro-diammineplatinum(CDDP)の登場以来,このnon-seminomatous germ cell tumor(NSGCT)の治療成績も画期的な進歩をとげてきた.それにもかかわらず,いまだ平均生存期間は14ヵ月で,これは,GCTの大半を占める精巣原発の治療成績に遠くおよばない.著者らは,自験例12例,及び文験的考察により,基本的治療法として次のような結論を得た. 
1.若年齢でGCTの疑いの強いものには,alpha-fetoprotein(AFP),human chorionic gonadotropin(HCG)などの腫瘍マーカーの検索を行うとともに,引き続き,縦隔鏡あるいは前方縦隔切開下生検などを行い,できるだけ大きな生検材料を得るように努力し,組織診断を行う. 
2.組織診断がNSGCT,あるいはAFPまたはHCG陽性のseminomaの場合は,CDDPを含んだ化学療法を行う. 
3.組織診断が,AFP,HCGのいずれも陰性のseminomaの場合,摘出手術のうえ,放射線療法の追加療法を行う. 
4.AFP,HCGなどの腫瘍マーカーが陽性の場合は,腫瘍マーカー,胸部レ線,CTなどにより総合的に判断し,化学療法の最大有効時に,adjuvant surgeryとしての摘出手術を行う. 
5.摘出腫瘍がmature teratomaなどでなく,悪性組織が残存している時には,引き続き,CDDPを含んだ化学療法を行う.

キーワード
縦隔原発悪性胚細胞腫, アルファ・フェトプロテイン(AFP), 人絨毛性ゴナドトロピン(HCG), シプラチン(CDDP), adjuvant surgery


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