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日外会誌. 88(3): 308-317, 1981


原著

膵癌の傍大動脈リンパ節転移およびその経路に関する研究
―剖検材料による検討―

東京大学 医学部第1外科学教室(指導:森岡恭彦教授)

永井 秀雄

(昭和61年5月23日受付)

I.内容要旨
腹部に著変を認めない高齢者剖検材料を用いて,傍大動脈リンパ節の局在および膵から傍大動脈領域へのリンパ流出路を解剖学的に検索するとともに,膵癌剖検例における傍大動脈リンパ節への転移状況について病理組織学的検索を行ない,膵癌の傍大動脈リンパ節転移およびその経路に関する検討を行なった.その結果,
1)腹部に著変を認めない剖検材料において膵のリンパ流出路は腹腔動脈根部から下腸間膜動脈根部の高さの大動脈前面~両側に存在する傍大動脈リンパ節と密接な関連を有すると考えられた.なお傍大動脈リンパ節を介さず腰リンパ本幹に直接流入するリンパ路も21例中8例(38%)に認められた.
2)外科的切除の対象となつたと考えられる膵癌剖検例10例中4例に組織学的な傍大動脈リンパ節転移を認めた.その局在は同領域への解剖学的な膵リンパ流路とほぼ一致していた.
3)根治性が期待できる例で,傍大動脈リンパ節郭清を行なうには,腹腔動脈根部から下腸間膜動脈根部の高さの大動脈前面~両側の結合織・神経叢を含めたen blocリンパ節郭清が心要と考えられた.

キーワード
膵癌, リンパ節転移, 傍大動脈リンパ節, 膵リンパ流出路, en blocリンパ節郭清


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