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日外会誌. 88(1): 89-95, 1987


原著

膵癌細胞に対する新しいモノクローナル抗体(Span 1~7)の作成と免疫生化学的検討

大阪市立大学 医学部第1外科

鄭 容錫 , 佐竹 克介 , 梅山 馨 , Young S. Kim

(昭和61年3月17日受付)

I.内容要旨
培養膵癌細胞SW1990を免疫原として7種類のモノクローナル抗体(Span 1~7)が得られた.それぞれの抗体は異なるepitopeを認識すると考えられた. 
1)Span 1~4抗体は膵癌細胞のみならず大腸癌細胞,肺癌細胞,melanoma細胞等と反応したが,それぞれ若干異なる対応を示した.Span 5,6,7は検索された30種類の細胞株の範囲では膵癌細胞株とのみ反応した. 
2)Span 1~4抗体のepitopeにはシアル酸が含まれていた. 
3)Span 1~7抗原はtrypsin処理によつても,Span 1~4抗原は熱処理によつても抗原性は保持された. 
4)抗原の細胞分布はすべての抗原で細胞膜分画に主に認められ,Span 1~4,6抗原は培養上清への分泌も認められた. 
5)Span 1~4,6抗体は膵癌細胞より精製した高分子ムチン様物質と反応した. 
6)Span 1~4,6抗原は血液型物質A,B,Lewis a,b,xとは異なるものであつた.
以上の結果より,Span 1~4抗体は膵癌を中心とした血清学的診断に,Span 5,7は免疫組織化学の手法を用いての特異抗原の分布,局在さらに原発不明転移巣の解明,画像診断への応用等に有用であると推測された.

キーワード
培養膵癌細胞, 膵癌関連抗原, モノクローナル抗体, Span 抗原, 膵癌精製ムチン


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