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日外会誌. 87(11): 1406-1413, 1986


原著

ラット胃癌細胞を用いた転移機構の解析
-自然肺転移モデルの確立-

東京大学 医学部第1外科学教室(主任:森岡恭彦教授)

清水 利夫

(昭和60年12月23日受付)

I.内容要旨
新しい動物実験モデルー自然肺転移モデルを作製し,癌の転移機構について検討した.N-methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)の経口投与によつて誘導したラット胃癌細胞株を用い,クローニングを施行した後,分離した1個のクローンからin vivo選択によつて高転移系腫瘍と低転移系腫瘍の両者を分離した.前者は常に後者の約20倍以上の肺転移結節を形成し,移植部腫瘍増殖能とは独立した性質と考えられた.両者の転移能の差は,肺における着床能の差異ではなく,原発巣から血管内へ腫瘍細胞が遊離するまでの過程の差に基づくものであることを明らかにした.又,この実験系における転移能の差異は,腫瘍細胞の生物学的環境の差によつて受けたepigeneticな変化によるものであることが示唆された.担癌ラットの血小板数と転移結節数には負の相関々係が認められ,低血小板状態が腫瘍細胞の転移を促進している可能性が示唆された.

キーワード
ラット胃癌, 転移の機序, 血小板数と転移, 癌細胞の heterogeneity


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