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日外会誌. 87(10): 1265-1274, 1986


原著

Indirect calorimetry による重症患者における代謝の研究

千葉大学 医学部救急部・集中治療部

稲葉 英夫 , 平澤 博之 , 佐藤 二郎 , 渡辺 敏 , 橘川 征夫

(昭和61年1月8日受付)

I.内容要旨
1985年3月から1985年11月までに当集中治療室にて糖質とアミノ酸による中心静脈栄養下に管理された48名の術後重症患者(臓器不全群19名,非不全群29名)についてindirect calorimetryを行い,以下の結果を得た.
1)代謝亢進の指標となるエネルギー消費/基礎代謝(EE/BEE)は,臓器不全群で1.44±0.18(平均±SD),非不全群で1.26±0.23であつた.
2)臓器不全群では非不全群に比し糖質エネルギー投与量による呼吸商の変動が大きく,投与エネルギーの不足は強い脂肪異化を,またエネルギー過剰投与は脂肪合成を促しやすく,至適エネルギー投与の重要性が示唆された.
3)投与窒素量が充分であれば,EEとほぼ等しいエネルギー投与により,窒素平衡を0に近い値に保持する事が可能であつた.
4)代謝の中心臓器である肝臓のミトコンドリアの機能を表現する動脈血中ケトン体比(AKBR)とエネルギー消費に占める脂質燃焼の割合(%FAT)との間には,負の相関関係が成立し,AKBRが低値を示す肝障害例では糖質の利用に障害があると考えられた.
以上,ベッドサイドでのindirect calorimetry は underfeedingのみならず,overfeedingの予防の点できわめて有益である.今後,至適投与エネルギー量のみならず,投与エネルギー基質の種類やアミノ酸量,および肝障害例においては投与エネルギーを生体に有効利用させるための積極的多面的肝補助へのアプローチを検討する必要がある.

キーワード
Indirect calorimetry, 重症患者, 動脈血中ケトン体比, 代謝, 栄養管理


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