[書誌情報] [全文PDF] (3997KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 87(7): 789-796, 1986


原著

腹壁瘢痕ヘルニアの手術と予後 : 657例の統計的観察

日本赤十字社医療センター 消化器外科

豊島 宏

(昭和60年5月18日受付)

I.内容要旨
腹壁瘢痕ヘルニアにつきアンケート調査を行ない,自験例を含めて27病院から10年間(1974年1月から1983年12月まで)の手術例657例を集計し,臨床像,手術術式,手術成績などを中心に検討した.初回手術例は571例(86.9%),2回目以降の手術例は86例(13.1%)であつた.
初回手術例について臨床像をみると,男女比は1:2.4と女性に多く,年齢分布では50歳代,60歳代にピークがみられた.発生部位は正中部が51.6%と最も多く,右下腹部が36.4%とこれに次ぎ,両者で88%を占めていた.術前の全身的合併症としては肥満,糖尿病,喘息などが多くみられた.
手術術式では,初回手術例で二層腹壁縫合法や層々腹壁縫合法による腹壁縫合閉鎖術87.5%,Overlap法6.4%,Mesh補綴術5.2%などの順に多く行われていた.2回目以降の手術例では腹壁縫合閉鎖術71.8%,Mesh補綴術18.8%などが主なものであつた.
再発率は9.1%であつた.再発率を悪化させる要因としては高齢,肥満,創感染,2回目以降の手術などが挙げられ,術後の創感染では33.3%と高い再発率であつた.また,初回手術例の再発率7.3%に比べて,2回目以降の手術例では20.3%と高率であつた.
術式別の再発率をみるとMesh補綴術2.4%,層々腹壁縫合法9.3%,二層腹壁縫合法9.6%,Overlap法16.7%であつた.2回目以降の手術例では腹壁縫合閉鎖術やOverlap法の再発率は高く,Mesh補綴術が再発の少ない確実な術式と考えられた.

キーワード
腹壁瘢痕ヘルニアの発生機序, 腹壁瘢痕ヘルニアの手術, 腹壁縫合閉鎖術, Mesh 補綴術, 腹壁瘢痕ヘルニアの術後再発率


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。