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日外会誌. 87(6): 593-603, 1986


原著

胃癌の腹膜播種性転移の発生機序に関する研究

横浜市立大学 医学部第1外科教室(主任:松本昭彦教授)

今田 敏夫

(昭和60年9月12日受付)

I.内容要旨
胃癌の腹膜播種性転移を明らかにする目的で,胃癌切除症例270例を対象として,メチレンブルーフォルマリン固定染色法を用い染色したところ,リンパ節のみならず,大網,小網内に見逃されていた微小播種性転移巣が明らかとなつた.そこで,この播種巣と肉眼的腹膜播種性転移巣,漿膜浸潤度,浸潤面積,組織型との関係を検討し次の結果を得た.
見逃されていた微小播種性転移巣はP0と判定した15.3%を占め,P陽性例を加えると,切除270例中28.1%が播種性転移陽性であつた.浸潤度S0で3.1%,浸潤面積0~10cm2で10.7%と比較的に早い時期から播種性転移が生じ,組織型では,未分化型が分化型に比し高頻度であつた.
さらに,漿膜因子以外からの播種性転移の可能性としてリンパ節転移を考え,その初期像として,癌がリンパ節のカプセルを破り,周囲に浸潤している像をとらえた.このような浸潤像をもつている例はリンパ節転移陽性例の45.0%を占めた.また,リンパ節転移個数が3個以上の例や,リンパ節転移巣の転移様式が結節性の例では,その頻度が高かつた.
以上のように,大網,小網,リンパ節周囲にも微小播種巣が存在するので,これらを一塊として取り除く郭清手術が胃癌の治療成績向上に必要である.

キーワード
胃癌, 腹膜播種性転移, 癌性腹膜炎


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