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日外会誌. 87(6): 604-607, 1986


原著

再発胃癌の時間学

1) 金沢大学がん研究所 外科
2) 昭和大学附属豊洲病院 

高橋 豊 , 磨伊 正義 , 荻野 知己 , 上田 博 , 上野 雅資1) , 草間 悟2)

(昭和60年9月17日受付)

I.内容要旨
癌の発育速度は,癌の生物学的特性を知る上で重要な一因子であることを,癌の時間学的観点より報告してきたが,今回再発胃癌において再発形式別に発育速度を比較検討するとともに,その臨床的意義について考察した.血中AFPあるいはCEA高値を呈した肝再発群18例,リンパ節再発群13例,腹膜再発群18例を対象に,腫瘍マーカーの経時的推移よりダブリングタイムを求めた.その結果,肝再発群では24.7±11.8日,リンパ節再発群41.1±22.4日,腹膜再発群42.2±19.6日となり,肝再発群とリンパ節再発群,腹膜再発群との間に有意の差が認められた.またこれより,再発の所見が画像診断などにおいて補えられない時期に,腫瘍マーカーの推移により再発形式がある程度予想しうることが示唆された.次にこのダブリングタイムの時間学的応用として,転移発生から臨床的に発見されるまでの転移潜伏期間を検討したところ,肝再発群1年から3年半,平均1.7年,リンパ節再発群1年から5年,平均2.7年,腹膜再発群1年半から6年,平均2.7年となり,臨床的には追跡必要期間として有用であると考えられた.ダブリングタイムと術後生存期間との間の相関関係について再発形式別にみたところ,肝再発群に有意の関係が認められた.これは,個々の症例の肝転移の大きさや個数などの背景因子が異なるにもかかわらず,癌の発育速度が生存期間を大きく左右することを示すものであると考えられた.

キーワード
再発胃癌, 腫瘍マーカー, ダブリングタイム, 転移潜伏期間, 術後生存期間


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