[書誌情報] [全文PDF] (7448KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 87(5): 536-546, 1986


原著

肝切除術後の肝血流動態の変化に関する実験的研究
198Au コロイド法,KICG,水素クリアランス法による比較検討-

岡山大学 医学部第1外科教室(主任:折田薫三)

津村 眞

(昭和60年6月24日受付)

I.内容要旨
肝切除術後に肝機能を左右する重要な因子は,残存肝実質の血流量であるという観点から,動物実験にて40%肝切除術を行い,残存肝の血流動態を測定した.動物は雑種成犬を用い,正常犬対照群と40%肝切除群にわけ,198Auコロイド法,ICG血中消失率(KICG),水素クリアランス法にて肝血流動態を観察した.また,40%肝切除群については,血流動態のほか,一般的な血液生化学的変動も観察し,実験終了後には屠殺して,肝再生組織像および肝再生率を検討した.
その結果,1)対照群において,198Auコロイド法,KICG,水素クリアランス法による肝血流量の比 較測定値は有意に相関を示した.2)40%肝切除群において肝血流量の経時的変動では,198Auコロイド法による肝血流指数およびKICGは肝切除後には減少し,肝再生に伴つて増加した.また,水素クリアランス法では,肝切除後早期には肝容積が減少しても組織重量あたりの血流量は増加することなくむしろ減少し,肝再生に伴つて,切除前値に復した.3)血液生化学検査では,肝切除後2時間で,GOT,GPT,切除後1週間でGPTの有意の上昇をみ,また,総蛋白量は切除後2時間,1週間において,ChEは切除後2時間で有意の低下をみた.4)肝組織像においては,切除後4日では肝細胞の肥大と胆汁うつ滞がみられ,切除後11日では2核を有する肝細胞が多数みられ,細胞分裂の旺盛なことが観察された.切除後3週間では殆ど切除前に近づき,再生が完成されつつあることが観察された.

キーワード
肝切除, 肝血流量, 198Au コロイド法, ICG 血中消失率(KICG), 水素クリアランス法

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。