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日外会誌. 87(3): 324-335, 1986


原著

胆管癌における血漿・組織 Carcinoembryonic antigen(CEA)の臨床的応用についての検討
-とくに CEA を用いた胆管癌の予後および遺残胆管癌の補助診断として-

久留米大学 医学部第2外科学教室(主任:古賀道弘教授)

福田 義人

(昭和60年3月11日受付)

I.内容要旨
胆管癌50例における血漿CEAの測定と非切除例を除く46例にPeroxidase-antiperoxidase法による組織CEAの検討を行なった.血漿CEAの平均値は,4.4±0.6ng/ml陽性率は68%Stage別では,Stage IVの平均値5.8±1.0ng/ml,陽性率79%,主占拠部位別では上部の平均値6.2±1.7ng/ml,陽性率75%であり,進行した癌ほど,上部に位置するほど,平均値,陽性率ともに高い傾向にあつた.さらに,脈管侵襲陽性例は79%に血漿CEAも陽性であり,脈管侵襲陰性例との間に有意差を認めた.しかし組織型による関連性では,乳頭状腺癌,管状腺癌,低分化腺癌の間に有意差は認めなかつた.以上のことより血漿CEAの上昇因子として,量的因子のほかに脈管侵襲の因子が強く関与していることが示唆された.また血漿CEAと予後をみると,術後の血漿CEAを経時的に測定することにより,短期間に急峻な上昇をきたした6例での予後は不良で,予後をみる上で再発の予知に対するモニターとして有用であると思われた.
つぎに組織CEAの検索を行なつた.癌部の組織CEAは76%に反応を認め,その局在は,乳頭状腺癌,管状腺癌では,luminal border,一部では細胞質,腺腔内depositであり,低分化腺癌では細胞質に反応をみた.組織型や腸上皮化生の示標となる癌部悪性杯細胞の有無とCEA産生能との関連性はないように思われた.最後に,癌巣内の組織CEA反応により,癌浸潤範囲の判定が明確かつ容易となり組織CEA反応を用いた切除断端の検索は遺残胆管癌判定の補助診断として有用であると思われた.

キーワード
胆管癌, 血漿 CEA, 組織 CEA 反応, Peroxidase-antiperoxidase 法, 遺残胆管癌


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