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日外会誌. 86(12): 1646-1653, 1985


原著

虚血性心疾患に基因する高度左室機能低下例に対するA-Cバイパス術の効果
-左室機能及び冠血流量からみた検討-

大阪大学 医学部第1外科
*) 奈良医科大学 第3外科

榊原 哲夫 , 広瀬 一 , 中埜 粛 , 松田 暉 , 河内 寛治*) , 北村 惣一郎*) , 川島 康生

(昭和60年3月1日受付)

I.内容要旨
虚血性心疾患に基因する高度左室機能低下例(左室駆出率が0.4未満)7例に対して,そのA-Cバイパス術前後安静時及び,術後運動負荷時に左室機能と冠状静脈洞血流量を測定し,正常対照例8例(G-C)と比較検討した.
1)駆出率(EF)は術後改善傾向を認めたが,統計学上有意差はなく(0.36±0.04,0.44±0.13),前後においてもG-Cのそれに比べ有意に低値を示した(P<0.001).
2)安静時心拍係数(CI)は,術後有意に増加し(2.09±0.55→2.94±0.59l/min/m2)(P<0.02),術前に存在したG-Cとの差は術後消失した.又,術後運動負荷時CI(5.94±1.51l/min/m2)もG-Cと差を認めなかつた.
3)術前安静時左室拡張末期圧(LVEDP)(16±8mmHg)はG-Cに比べ有意に高値を示した(P<0.05)が,術後(11±4mmHg)その差は消失した.しかしながら,術後運動負荷時LVEDP(25±10mmHg)はG-Cに比べ有意に高値を示した(P<0.01).
4)安静時左室一分間仕事量(LVMW)は,術後有意に増加し(3.51±1.03→6.02±2.98kg・M/min)(P<0,05),術前に存在したG-Cとの差は消失した.又,G-1の運動負荷時LVMW(10.9±3.54kg・M/min)もG-Cと差を認めなかつた.
5)安静時冠状静脈洞血流量(CSF)は術後有意に増加し(73±15,123±44ml/min)(P<0.02),術前存在したG-Cとの差は術後消失した.又,運動負荷時CSF(289±99ml/min)はG-Cと差を認めなかつた.
6)以上の検討の結果,高度左室機能低下例の心機能及び冠状静脈洞血流量に対するA-Cバイパス術の有効性が明らかとなつた.

キーワード
A-Cバイパス術, 左室機能, 冠状静脈洞血流量, 運動負荷

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