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日外会誌. 86(12): 1618-1624, 1985


原著

障害肝の肝切除時におけるProstaglandin-E1投与の意義に関する基礎的検討

千葉大学 医学部第1外科

志村 賢範 , 宮崎 勝 , 越川 尚男 , 高橋 修 , 菅沢 寛健 , 藤本 茂 , 奥井 勝二

(昭和60年3月4日受付)

I.内容要旨
D-Galactosamine HCI(D-Gal.)障害肝ラットにおける肝切除後再生に対するProstaglandin-E1(PG-E1)投与の効果を検討した.PGE1 1.0μg/kg/minはD-Gal投与24時間目に末梢静脈より40分間持続注入し,20分間注入した時点で68%肝部分切除を施行した.D-Gal 600mg/kg障害肝においてPGE1を0~2.0μg/kg/minに亘り投与すると,非投与群に比し,肝切除24時間後のDNA合成能の亢進を認め,0.5,1.0μg/kg/minでp<0/01の有意差を認めた.一方血清GOT,GPT値の変動を比較すると,PGE1投与群に明らかなる差を認めなかつた.水素ガスクリアランス法による肝組織血流量の測定ではPGE1 0.5,1.0μg/kg/minでは血流増加効果は認め得なかつた.肝組織内C-AMP値は生食およびD-Gal 600mg/kg前処置例でPGE、投与により20分後に上昇を認めた(p<0.05).肝組織内C-GMP値はPGE1投与群,非投与群に明らかな差は認め得なかつた.さらにDNA合成能,C-AMPでPGE1により有意の上昇効果を示し得たD-Gal 600mg/kg障害肝における肝組織ATP値の測定ではPGE1投与により非投与群に比し上昇を認め,肝切除後20分目および3時間目で有意な上昇(p<0.05)を示し得た.
以上の様にD-Gal障害肝における肝切除後再生肝のDNA合成の抑制はPGE1投与により軽減され,肝再生促進効果を認め,この効果は肝組織内血流増加作用に依らず発揮されPGE1による肝組織内C-AMP値およびATP値の増加の作用を介している可能性が強く示唆された.

キーワード
肝再生, プロスタグランディンE1, cyclic nucleotide, ATP, ガラクトサミン障害肝


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