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日外会誌. 86(8): 901-911, 1985


原著

悪性腫瘍に対する高温・化学・照射療法に関する基礎的研究

九州大学 医学部第2外科教室(指導:井口 潔教授)

甲斐 秀信

(昭和59年11月30日受付)

I.内容要旨
高温療法はBleomycinや放射線の抗腫瘍効果をsynergisticに増強することから,これら三者の併用により強い抗腫瘍効果が得られることが期待される.しかし大線量の放射線や,長時間またはより高い温度の加温を組み合わせたのでは放射線による正常組織損傷が顕著となることから,これら三者の併用療法においても治療効率のよい併用条件を見出す必要がある.
本研究ではDDDマウス移植Ehrlich癌に対し,単独ではほとんど抗腫瘍効果を示さない治療量の三者,すなわち42.5℃ 30分間の局所温浴加温(HTM),1/10 LD50 Bleomycin静注(BLM)および200rad X線照射(200R)を用い,これらの併用における抗腫瘍効果に検討を加えた.
これら三者のうちの二者の併用では,いずれの組み合わせにおいても各単独療法に比べ若干の腫瘍増殖の抑制がみられたが,三者を同時に併用した場合では,どの二者の併用に比しても有意に強い増殖抑制効果がみられた(HTM+BLM+200R と BLM+200RおよびHTM+BLMの間でp<0.05, HTM+BLM+200R と HTM+200Rの間でp<0.01).また生存率における比較でも,移植後13週目においては,各二者併用群の生存率が30~50%にとどまつたのに対し,三者併用療法群では,80%と最も高い生存率が得られた.
次にBLMと200Rの二者同時併用に対し,種々な時間的 timing で HTM を併用したところ,最も強力な抗腫瘍効果がみられたのは,これら三者を同時に併用した場合であり,温熱のこれら二者に対する増感効果は併用時間間隔が2時間以内である場合には認められたが,4時間以上の間隔では加温を併用しない場合とほぼ等しい抗腫瘍効果が得られたにすぎなかつた.また高温療法の併用の順序による抗腫瘍効果の差は認められなかつた.

キーワード
局所高温療法, Bleomycin, 放射線療法, Ehrlich腹水癌細胞


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