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日外会誌. 86(6): 709-716, 1985


原著

閉塞性黄疸ラットに対する正常ラットとの交叉灌流の意義について

東北大学 第1外科

深谷 久美 , 小山 研二 , 大内 清昭 , 佐藤 寿雄

(昭和59年8月30日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸例では消化管出血,肝不全,腎不全など重篤な合併症を併発することがあり,その病態生理にはいまだ不明な点も少なくない.そこで閉塞性黄疸ラットと正常ラットとの交叉灌流を行い,黄疸血中の臓器障害因子を積極的に除去することにより,体液の正常化に伴う障害臓器の回復の有無また黄疸体液による生体への代謝負荷について,肝,腎ミトコンドリア呼吸能を中心に検討を加えた.成績は次の通りであつた.
1)交叉灌流による黄疸血の稀釈効果は灌流時間が長時間に亘る程著明であつた.
2)交叉灌流による黄疸ラットの肝ミトコンドリア呼吸能には明らかな変化はみられなかつたが,腎ミトコンドリア呼吸能は灌流時間が長い程持続的改善がみられた.
3)交叉灌流のパートナーである正常ラットの肝,腎ミトコンドリア呼吸能では,腎に一過性の低下,肝では遷延性の低下がみられた.
以上より閉塞性黄疸時交叉灌流をはじめとする各種血液浄化法を行うことにより,腎ミトコンドリア呼吸能の改善が期待され,腎不全発生の予防にも有用と考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, 交叉灌流, 肝・腎ミトコンドリア呼吸能, 腎不全


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