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日外会誌. 86(3): 362-366, 1985


原著

左総腸骨静脈へ破裂し,深部静脈血栓症に酷似した症状を呈した腹部大動脈瘤の 1 治験例

鳥取大学 医学部第2外科

野津 長 , 伊藤 勝朗 , 小川 正男 , 浅野 孝治 , 岡野 一廣 , 原 宏 , 森 透

(昭和59年4月16日受付)

I.内容要旨
腹部大動脈瘤が左総腸骨静脈へ破裂し,左下肢の疼痛,腫脹,表在性静脈の怒脹など深部静脈血栓症に酷似した症状を呈した59歳男性症例を経験し,治癒せしめた.手術に際しFogarty’s occlusion catheterを下大静脈へ挿入して,瘤壁からの遊離血栓による肺塞栓症を防止し,また,中枢側からの血液の逆流をコントロールして出血に備えた.瘻口は3.0×1.0cmと大きく,左総腸骨静脈と交通していた.瘤の下壁を利用してこれを縫着して瘻口を閉鎖した.瘻口から湧出した血液はすべてCell Saverで吸引回収して自家血輸血を施行した.腹部大動脈はDacron Y字型人工血管で置換した.術後経過は良好で,胸部X線写真でCTRは51%より42%へ,心拍出量は111/分より61/分と正常化し,深部静脈血栓症に酷似した諸症状も消失した.診断ならびに治療上,興味ある多くの問題を提起した1例と思われた.

キーワード
腹部大動脈瘤破裂, 動静脈瘻, 深部静脈血栓症


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