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日外会誌. 86(3): 298-303, 1985


原著

閉塞性黄疸時における急性潰瘍についての実験的研究
-特に胃粘膜血流からみて-

1) 東北大学 第1外科(主任:佐藤 寿雄教授)
2) 山形大学 第1外科

今野 喜郎1) , 佐々木 巌1) , 成井 英夫1) , 亀山 仁一2)

(昭和59年4月12日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸時に発生する急性潰瘍の病態および予防としての迷切術の効果について,主として胃粘膜血流動態より実験的に検討した.
体重250g前後のSD系雄性ラット188匹を用い,対照群,黄疸群,迷切群,黄疸兼迷切群の4群にわけ,2週後に10時間の水浸拘束を負荷して潰瘍係数および胃粘膜血流を測定し,以下の成績を得た.なお胃粘膜血流は水素ガスクリアランス法にて測定し,電極は著者らが考案した胃痩を用いた接触法にて固定した.
1.対照群では水浸拘束後経時的に潰瘍係数は増加し,胃粘膜血流は減少した.
2.黄疸群では潰瘍係数は対照群より有意に高値を示し,胃粘膜血流は水浸拘束前は対照群と差はなかつたが,拘束後は対照群より有意に低値を示した.
3.迷切群では潰瘍係数は対照群に比べ有意に低値を示したが,胃粘膜血流は水浸拘束前後とも対照群と差はなかつた.
4.黄疸兼迷切群では潰瘍係数は黄疸群より有意に低値を示し,胃粘膜血流は水浸拘束前は黄疸群と差はなかつたが,拘束後は黄疸群に比べ有意に高値を示した.
以上より,閉塞性黄疸時ではストレスにより胃粘膜血流が著明に減少することが急性潰瘍を増悪させる一つの因子であると思われた.また,迷切術は閉塞性黄疸時に胃粘膜血流の減少を抑制し,急性潰瘍の発生を予防する効果があるものと考えられた.

キーワード
急性潰瘍, 胃粘膜血流, 閉塞性黄疸, 迷切術


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