[書誌情報] [全文PDF] (5094KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 86(2): 139-147, 1985


原著

イヌ実験食道癌の発生に関する内視鏡的, 病理組織学的研究

東京医科歯科大学 医学部第1外科

竹下 公矢 , 砂川 正勝 , 中嶋 昭 , 越智 邦明 , 羽生 丕 , 星 和夫

(昭和59年4月3日受付)

I.内容要旨
臨床的ならびに病理組織学的研究の上から,ヒト食道癌の疾患モデルとして有用な実験系を確立する目的で,ビーグル犬37頭(雄15頭,雌22頭)にENNG(N-Ethyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine)を75mg/日経口投与した.投薬期間別に3,6,9ヵ月の3群(雄については4,5ヵ月を加えた5群)に分け,全例に経時的に内視鏡検査,生検組織診を施行し,うち28頭には剖検後病理組織学的検索を加えた.その結果,食道癌の出現頻度に著明な性差(雄0%,雌22頭中5頭,23%)を認めた.また早期の食道癌を発生させるには,ENNGを150μg/mlの濃度で1日500ml(75mg/日),6~9ヵ月間投与し,観察期間も24ヵ月程度が適当であるとの結果をえた.食道癌病巣は5頭,12病巣に認められたが,大多数が高分化型,隆起型で占められており,深達度も粘膜下層までに留まつていた.また他に過形成,異型上皮各2,metaplasia 1病巣を認めた.内視鏡的観察結果から,食道病変の多くは休薬後1ヵ月以内に小隆起,発赤として出現し,さらに4~6ヵ月後に明瞭な癌病巣として確認された.一方,これら食道癌の発生に約4ヵ月先行して,全例に胃癌の発生を認めたので,今後さらに食道癌のみを発生せしめる実験方法の確立に努力する必要がある.病理組織学的にはイヌの食道病変でえられた光顕,電顕所見は,ヒトのそれらとよく類似していることが判明し,ENNG投与による食道癌は腫瘍の発生や進展過程の解明に有用なモデルとなりうるものと確信する.

キーワード
イヌ実験食道癌, ENNG (N-Ethyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine), 食道胃重複癌, 食道癌の超微構造

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。