[書誌情報] [全文PDF] (2445KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 86(1): 51-54, 1985


原著

心筋硬塞後心室中隔穿孔の治療方針

名古屋大学 第2外科

保浦 賢三 , 小川 裕 , 関 章 , 岡本 浩 , 広瀬 豊 , 安間 文彦 , 宮崎 正治

(昭和58年9月2日受付)

I.内容要旨
名古屋大学第2外科教室および関連施設では,8例の心筋梗塞後心室中隔穿孔(VSR)を経験した.著者らの経験よりVSR発症後の病態を3群に分類することが可能であつた.すなわち(1)群は心原性ショックの病態を呈し,(2)群は発症後に心不全症状を呈し,その症状が重度であるためにカテコラミンの投与を必要とする症例群である.(3)群は発症後にやはり心不全症状を示すが,症状は軽度でジギタリス製剤と少量の利尿剤で容易に治療できる症例群である.治療方針として,(1)群はただちに手術をするのが唯一の救命方法である.(2)群は,カテコラミン投与にもかかわらず徐々に全身状態の悪化する傾向があり,大動脈内バルソパンピング(IABP)や人工呼吸管理が必要となることが多い.同時に,これらを必要とする時点で手術を考慮することが望ましいと考えられる.(3)群は充分6週間以降まで待機することが可能である.VSRを発症する症例の冠動脈病変は,本邦では平均1.4枝とされ米国のように多枝病変の合併症は少く,心筋のポンプ機能も残存していることが多い.治療方針を徹底させて外科治療を施行すれば充分に救命可能であると考えられる.

キーワード
心筋梗塞後心室中隔穿孔, IABP, 心不全, 心原性ショック


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。