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日外会誌. 85(12): 1570-1578, 1984


原著

回腸切除後の胆汁の催石性に関する臨床的研究

横浜市立大学 医学部第2外科学教室(指導:土屋周二教授)

仲野 明

(昭和59年3月8日受付)

I.内容要旨
回腸切除例40例を対象として,胆汁中の胆汁酸,脂質組成を分析し,切除回腸の部位と長さによる胆汁の催石性(以下lithogenicity)の差異について検討を加えた.また回腸切除9例に胆汁酸製剤ursodeoxycholic acid (以下UDCA)を1日300mgづつ1カ月間投与し同様な分析を行い, lithogenicityの変化についても検討を加えた.
回腸切除後の胆汁のlithogenicityは, Admirand and Smallの三角およびThomasのlithogenic indexで上昇を認めた. とくに切除回腸の長い群(100cm以上)および回腸人工肛門群で有意に上昇していた. lithogenicityの上昇は,胆汁中の胆汁酸や燐脂質に対しコレステロール%モル比の相対的な上昇に起因するものであった.また切除回腸の長さとlithogenic indexの上昇は,有意な相関(r=0.65, p<0.001)を示した.
胆汁中の総胆汁酸濃度およびdeoxycholic acidの比率が,回腸切除後には有意に減少していた.とくに切除回腸の長い群および回腸人工肛門群で著明に減少していた.
UDCA投与により,胆汁中の総胆汁酸濃度の変化は軽度であったが,胆汁酸分画ではUDCAの比率は有意に増加した.また胆汁のlithogenicityは, UDCA投与後には有意に低下した.
回腸切除後に胆汁酸吸収障害がおこり, lithogenicityが上昇することが判明した.それらは,切除回腸の長さに強く関与していることが明らかとなった.また回腸切除後の胆石発生予防に, UDCAの投与が有効であると考えられた.

キーワード
回腸切除, 胆汁酸, lithogenicity ursodeoxycholic acid (UDCA)


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