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日外会誌. 85(12): 1518-1522, 1984


原著

乳癌予後因子による再発の判別
-再発確率数量化モデルの作製-

東京医科歯科大学 第2外科学教室

邑山 洋一 , 三島 好雄

(昭和59年2月22日受付)

I.内容要旨
98例の乳房切断術を受けた原発乳癌症例を対象に,多変量解析,数量化II類の手法を用いて, 7種の予後因子をアイテム・カテゴリーとして,これらのアイテム・カテゴリーの再発判別能力および再発確率曲線を求めた. 7種の予後因子は,年齢,月経,組織型,腫瘍細胞のリンパ管内侵襲(ly),腫瘍細胞の血管内侵襲(v),癌浸潤の波及程度, tnm病期であった.上記,予後因子による再発判別効率は, 82.6090%を示し,重相関係数は0.69714であった.再発確率(P) は次式で示された.
P=1/1+7.333e5.468x(x:判別スコアー, 7種のアイテム・カテゴリーの再発判別能力の和で示される).
全症例のPの平均値±標準偏差は0.19±0.23であった.これを再発群と非再発群で比較すると,両者は,各0.49±0.29, 0.10±0.09, となり両者の平均値は統計学上有意差を示した(p<0.01).さらに, P=12%以下では,再発群は3/23例含まれ,非再発群は54/75例含まれていた(χ2= 25.26,p<0.001),しかしP=30%以上では,各,18/23例,2/75例含まれ,その差は統計学上有意であった(χ2=61.83,p<0.001).したがつてP=12%以下であれば,再発する可能性が,きわめて低いと判定されるがP=30%以上であると,再発する可能性が高いhigh risk症例と推定された.一方, PとDFI(Disease Free Interval)の間には,相関性が存在しなかった.以上の成績から,手術直後1〜 2カ月で得られる予後因子を組み合わせる事により,個々の症例の再発の有無は数量化された値(再発確率)として正確に把握し推定しうると考えられる.

キーワード
乳癌, 予後因子, 多変量解析

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